第2話 プロローグ②

フロレンティナは、目に涙を浮かべながらも、必死に笑顔を作った。そして、マッテオに向かって力強く敬礼、戦略室から退室した。

その後、フロレンティナは、特殊研究室に駆けつける。

すると、フロレンティナの上司である、マリーが駆け寄ってきた

「フロレンティナ!シェルタールームへ退避するわよ。急ぎなさい!」

「マリー准尉、その前にお願いがあります」

「お願い?何を?」

「私の記憶をバーチャルロイドにコピーします。オペをお願いできますか?」

「え!?何を言っているの?あれは、試験段階の装置で、人の記憶をコピーするなんて、ほとんど成功しなかったでしょ?」

「大丈夫です!あの後も、研究は続けていたんです。レポートへの記載が遅れていたのですが、実験そのものは、100%成功しています」

「うそ!?この前、スペックが足りなくてプログラム、暴走したでしょ?停止させるのに精一杯だったじゃない」

「確かに。この戦艦のクラスターシステムじゃダメだった。それで、その後、考えたの。ハデスのクラスタだったらできるんじゃないかって」

「まさか!?ハデスのサーバーをハッキングしたの?」

「うん」

「すごい!あなた、やっぱり天才ね。じゃあ、あなたの記憶のコピー先はハデスのサーバーなのね?」

「もちろんです」

「よく、そんなことができたわね。どうやったの?」

「ごめんなさい、それを話している時間はなさそうです」

「そうね、また、今度にするわ」

「ありがとうございます、それではオペをお願いします!」

「でも、オペをやっていると、避難に間に合わなくなるわよ」

「こんなこと、言ってごめんなさい。でも、言わなきゃいけないから言います。実は、先ほど大佐と直接会って話を聞きました。今度の戦闘。私たちの勝算はほぼゼロ、という試算なんです」

「!!」

マリーは一瞬、恐怖に引き攣った表情をしたが。

しかし、すぐに死を覚悟を決めた目つきに変わった。

「記憶をコピーした後、私も前線で戦います!」

マリーは笑顔で。

「最初に言っておくけど。彼に会うのはあなた自身なんですよ。あなたの記憶をコピーしたバーチャルロイドではないわ。これは、最終手段として使うのよ」

「わかってます。絶対に生きて、またここに戻ってきます」

「よし、じゃあ、検査台の上に横になって」

「はい!」

フロレンティナは、靴を脱いで、検査台に登り、横になった。

マリーは特殊器具を取り出し、フロレンティナの頭部に装着した。

「これで、いい?」

「大丈夫です、ありがとう。20分ほどで記憶のコピーは終わるから。その間だけ、私の手を握っていてもらえますか?」

フロレンティはそういうと、恐怖で震えた手を、マリーに差し出した。

察したマリーは優しい笑顔で

「ええ、わかったわ」

「痛くない?」

「ぜんぜん、平気です」

「そう、じゃあ、起動するわよ」

その時だった。

フロレンティナは、これからの死ぬことへの悲しみが一気に湧いてきた。

「結婚してみたかったなあ」

フロレンティナは、つい思わず本音を呟いた。そして、声を抑えつつ、泣き始めた。

その言葉を聞いたマリーは、フロレンティナを抱きしめた。

「ごめんなさい!まだ、子供なのに、こんな辛い思いさせて」

フロレンティナは、首を横に振って。

「准尉は悪くない!みんなは悪くない!悪いのは私!研究でみんなを守ってやれなかった!もっと強力な武器を持たせてやれなかった!本当に悔しくて…」

「何を言っているの?精一杯、やってくれたじゃない。みんな、あなたにすごく感謝している」

「…」

「後は、生き延びた人たちに託しましょう」

「はい」

フロレンティナは、泣きながらも、精一杯の返事をした。

そして。

15分後

フロレンティナの記憶が完全にコピーされたバーチャルロイドが、室内の大型モニターに表示された。

「よし、精一杯泣いたし、私の分身も完成!」 

フロレンティナは笑顔を取り戻した。

「本当、あなたにそっくりね」

マリーは、モニターに映し出されたもう1人のフロレンティナを見ながら言った。

「性格も、私と同じよ。記憶のコピーも完了しているから私の分身としては完璧。あとは、私の体内に埋め込まれている脈拍信号が受信できなくなったら、私が死んだと判定し、この子は目を開くわ」

「なんだか、複雑よね」

じゃあ、私の代わりに会ってきてね。シヴィ・フェリックスに…

フロレンティナは、自分のバーチャルロイドに向かって、調査していたある少年の名前を呟いた。

「ああ、私も一度、会ってみたかったな」

フロレンティナ、ため息混じりの笑顔を見せる

「何言っているの!?生きて、あなたが出会うんでしょ?」

「ふふ、そうだったね」

「その人に恋しているのでしょ?」

「え!?何を言っているんですか?そんなんじゃないですよ!!」

フロレンティナは顔を真っ赤に赤らめた。

「本当?」

マリーは、ニヤついて、フロレンティナをからかった。

「本当ですって、まだ会ったこともないんですよ!!」

「じゃあ、なおさら、生きて戻ってこないとダメよね?」

「…」

「絶対」

「うん」

フロレンティは、笑顔で力強く頷くと

マリーに背を向け、研究室から出た。

そして、2時間後。

フロレンティナは自室に戻っていた。

宇宙スーツを身にまとい、ライフルに弾丸を詰め込んでいた。

長い髪が目にかからないように、三つ編み状に束ねた。

一つ、大きな深呼吸をして、目を閉じる。

暫くすると。

艦内に、大きなアラート音が響き渡った。

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